8月27日、マリーナホップ近くの西区観音新町4―10―134で2階建て延べ約4900平方㍍の新本社「モビリティスクエア」の稼働を始めた。本社機能は中区広瀬北町から移転。カスタマイズ店「GRガレージ」も五日市IC近くから移し、整備工場を併設する複合拠点として打ち出す。開設の狙いや背景について聞いた。
―開設の背景を教えてください。2020年から当社では、100年に一度とされる業界の変化に対応するための社内改革を進めています。その中でカーディーラーの基盤収益となる整備の面において、二つの大きな課題があると認識しました。一つ目は工場のキャパシティー不足です。既存工場の拡張は難しいため、アクセス性に優れた広い土地として、この場所がベストと考えました。また旧本社も築44年と老朽化が進んでおり、移転を決断。広瀬北町は好立地ゆえ惜しい気持ちもありましたが、より有効に使ってもらうことが地域にとって最良の形だと思っています。旧本社1階にあったショールームは、同町内にある先々代の本社跡地で年明けに移転オープンします。新工場では近郊の店舗の業務量軽減を図ります。例えば顧客の自宅や会社で車両を預かり、整備後にお返しする「納引」の作業は店の負担が大きいため、新工場で請け負う構想です。また店舗で売約となった中古車の整備なども同様に対応します。―二つ目の課題は何でしょう。整備士の育成・採用です。以前はせっかく集めた人材の育成が不十分なまま現場へ送り込んだ結果、店舗の生産性低下や本人の離職につながるケースがありました。新工場は新人整備士の研修拠点としても活用。入社後1年間は業務をしながら、じっくりと技術や知識を習得してもらい、自信を持った状態で配属します。採用面では、カスタムパーツの販売や取り付けを行うGRガレージの存在が大きいと考えています。整備士にとって聖地のような場所であり、実際に見学に訪れた学生からは「こういう所で働きたかった」など、好意的な反応を得ています。―2階の本社フロアの構造は。総務や営業系など、本部の全部署がワンフロアに集まっています。ウキウキして会話が弾む会社にしたいという私の思いを反映したものです。以前の本社は階が分かれていて隔たりを感じましたが、この構造によって風通しが良くなりました。またフロア奥には、いつでも食事や打ち合わせが可能なリラクゼーションスペースを設置。これまで更衣室内で昼食を取っていた女性社員や研修中の新人整備士も利用してくれ、私自身も彼らと活発なコミュニケーションができています。―本社移転以外の取り組みは。9月に安佐南区緑井の広島北店をリニューアルしました。2階のワークスペースなど、くつろげる空間を目指して工夫しています。また電動化への対応として、当社で初めて急速充電スタンドを設置しました。一方で3月末に祇園店(同区西原)、4月末には大竹店を閉店。店舗網再編と適切な投資により、変革期でも生き残れる体制をつくる方針です。グループ中核の広島トヨタ自動車は24年3月期に売上高340億円、経常利益20億円、純利益9億6500万円といずれも過去最高を達成。今期も同等を見込んでいますが、車販がやや伸び悩んでいるのでもう一踏ん張りといったところです。―電動化など外部環境の変化は。トヨタだけでなく国内外の各銘柄でEVの導入が進んでいますが、現在の充電インフラの状況では、しばらくはハイブリッドやプラグインハイブリッド車が国内市場の中心となるでしょう。当社は長年、トヨタの最上級モデルであるクラウンの専売チャンネルとして歩んできました。20年に始まった全車種併売は新たな顧客層を開拓する好機でもありますが、まずはこれまでの顧客とのつながりを強めなければなりません。そのためには既に述べたような店舗などハード面の拡充に加え、人の力を伸ばすことが何よりも重要。新拠点で多くの人材を集め、育てるほか、各店舗では広島トヨタを選んでいただくきっかけとして、車の楽しさを伝えるイベントなどに注力していきます。
プロフィル

ふじい かずひろ1963年12月20日生まれ、広島市出身。三井物産を経て88年に広島トヨタ自動車入社。翌年8月に父で先代の藤井洋司社長が急逝したことを受け、25歳で社長就任。2023年2月に同社を中核とする広島トヨタホールディングスを設立し、両社の社長を務める。
担当記者:近藤