１９９１年にル・マン24時間レースで日本車として初優勝した「７８７Ｂ」は昨年、日本自動車殿堂「歴史遺産車」に選定。ＲＥ搭載車では67年発売の「コスモスポーツ」に続く。今年２月１日、36人の技術者が集まり「ＲＥ開発グループ」を復活させた。発電用などで一層改良するほか、環境規制が強まる中でカーボンニュートラル（ＣＮ）燃料対応など研究開発を進める方針だ。　１９７４年の本誌インタビューで当時の松田耕平社長は排出ガス規制の強化に触れ、「まず、いかにして現在の燃料でエネルギー効率を高めるか。長期的に見るとＲＥの燃料はガソリンからアルコール系へ、そして水素へと進みそうだ」と話した。50年たった現在、同社は水素燃料のＲＥ搭載車を世界で初めて実用化（２００６年にリース販売）。ＣＮ燃料を使うロードスター（２・０Ｌ直列４気筒自然吸気エンジン）をスーパー耐久レースで走らせている。ものづくり企業にとって基幹技術を磨くことは無論、その時代に求められる形を模索し続ける姿勢が必要なのだろう。

舶用液化水素ポンプを実用化 大型運搬船の普及を展望

シンコーは世界シェア95％の大型液化天然ガス（ＬＮＧ）タンカー用カーゴポンプ、世界シェア5％以上の原油タンカー用カーゴポンプなど舶用ポンプや蒸気タービンを製造販売している。舶用で培った技術を陸上プラントに転用し、近年は国内43都道府県に１８０台以上の都市ごみ焼却発電機タービンを供給するほか、アジアを中心に全世界へ約１８００台のバイオマス発電タービンを拡販するなど環境問題解決に高い意識を持つ。同社が世界で初めて開発した荷揚げ用「液化水素サブマージドモータポンプ」＝写真＝は、20年に川崎重工業が建造した世界初の液化水素タンカー「すいそ ふろんてぃあ」に搭載され実用化した。11年、川崎重工業など複数社の協力を受けて同ポンプの開発に着手した。水素はマイナス２５３度まで圧縮冷却し液化すると気体時の８００分の１の体積になり運搬効率が著しく上昇するが、マイナス１６３度のＬＮＧより低温で、金属を脆化（ぜいか）・腐食する特性があるため、耐性がある材質を厳選。また可燃性が高い水素は漏出が許されないため、密閉性が高い構造で、液体にポンプ本体を直接入れ込む「サブマージド式」を採用した。13年には小型の試作機を完成するも国内では水素ポンプの試験施設がないため海外でテストし、計画通りの数値を達成。19年に商用機を納品した。

実証実験船のすいそ ふろんてぃあの容量は約１２５０立方㍍と小型だが、世界的には需要の拡大に伴う水素船の大容量化の動きがある。川崎重工業は22年4月に容量16万立方㍍液化水素運搬船の基本設計承認を取得したほか、24年9月には商船三井が豪エネルギー企業や韓国の造船所などと協力し容量８万立方㍍船で同承認を取った。同社は先行して大型液化水素カーゴポンプの開発を終えており、水素社会の輸送を支える準備は万端だ。