１９９１年にル・マン24時間レースで日本車として初優勝した「７８７Ｂ」は昨年、日本自動車殿堂「歴史遺産車」に選定。ＲＥ搭載車では67年発売の「コスモスポーツ」に続く。今年２月１日、36人の技術者が集まり「ＲＥ開発グループ」を復活させた。発電用などで一層改良するほか、環境規制が強まる中でカーボンニュートラル（ＣＮ）燃料対応など研究開発を進める方針だ。　１９７４年の本誌インタビューで当時の松田耕平社長は排出ガス規制の強化に触れ、「まず、いかにして現在の燃料でエネルギー効率を高めるか。長期的に見るとＲＥの燃料はガソリンからアルコール系へ、そして水素へと進みそうだ」と話した。50年たった現在、同社は水素燃料のＲＥ搭載車を世界で初めて実用化（２００６年にリース販売）。ＣＮ燃料を使うロードスター（２・０Ｌ直列４気筒自然吸気エンジン）をスーパー耐久レースで走らせている。ものづくり企業にとって基幹技術を磨くことは無論、その時代に求められる形を模索し続ける姿勢が必要なのだろう。

ＲＥは１９６７年に同社が世界で初めて搭載車の量産に成功。世界の大手メーカーが諦めるほど実用化が困難な技術をものにした矜持があるのだろう。発電機として開発する際も幾多の壁を乗り越え、軽量小型で高出力の特長を最大限に生かす。ＭＸ‒30の限られたスペースに積めるようローターをＲＸ‒８の二つから一つに減らしたほか、軽量化と強度の向上を図った。サイドハウジング（密閉する面状部品）の素材は鉄からアルミに変え、エンジン単体で15 ㌔以上の軽量化を達成。サイドハウジング表面にはセラミックの溶液を強く吹き付けて耐摩耗性を高めた。さらに歴代のＲＥで初めて直噴化し、燃焼室の形状も最適化することで燃焼効率を追求。燃焼圧力が高まるため、生産面ではシール（気密を保持する部品）の厚みを持たせた。ＰＨＥＶは一般的に発電機を積むことから車体が大きくなるが、コンパクトＳＵＶに搭載できたのはＲＥならではという。生産面では、対象をモデル化して効率的にシミュレーションするモデルベース開発や３Ｄスキャンの寸法管理などデジタル技術を駆使。測定器も用い、ローターのバランス精度を高めた。50あった切削工程は高速１軸ＮＣ（数値制御）ラインで９工程に短縮。穴、外郭、燃焼室という三つの加工を汎用マシニングセンタ１台で全て対応できるように工夫した。自動化が進んでも機械で判別できないバネの反発具合は、熟練者の指先に伝わる感覚で検査。匠の技で品質を保つ。弘中武都執行役員は、「12年のＲＸ‒８生産終了後も交換用のエンジンや部品を造り続け、技能伝承を図った。ＲＥを復活させることができ、社員みんなが喜んだ。当社は、電気自動車を含む多車種を同じラインで混流生産できるノウハウがある。

ものづくりの源流から考え、固定すべき工程や変動要素を明らかにするとともに汎用化を促進し、専用の設備機器が必要な部分は最小限にしてきたことが大きい。こうした技術資産を積み上げてきたため、既存の設備を応用でき、総じて投資額を抑えられた。開発時から生産現場のことを想定しており、両部門の関係が近い当社の強みと言える」ＲＥ搭載車を初めて世に出した時には四十七士と呼ばれる技術者たちが心血を注ぎ、異常な摩耗痕が付く難題を解決するなど、その技術とプライドの粋は今なお高い評価を受ける。１９９１年にル・マン24時間レースで日本車として初優勝した「７８７Ｂ」は昨年、日本自動車殿堂「歴史遺産車」に選定。ＲＥ搭載車では67年発売の「コスモスポーツ」に続く。今年２月１日、36人の技術者が集まり「ＲＥ開発グループ」を復活させた。発電用などで一層改良するほか、環境規制が強まる中でカーボンニュートラル（ＣＮ）燃料対応など研究開発を進める方針だ。１９７４年の本誌インタビューで当時の松田耕平社長は排出ガス規制の強化に触れ、「まず、いかにして現在の燃料でエネルギー効率を高めるか。長期的に見るとＲＥの燃料はガソリンからアルコール系へ、そして水素へと進みそうだ」と話した。50年たった現在、同社は水素燃料のＲＥ搭載車を世界で初めて実用化（２００６年にリース販売）。ＣＮ燃料を使うロードスター（２・０Ｌ直列４気筒自然吸気エンジン）をスーパー耐久レースで走らせている。ものづくり企業にとって基幹技術を磨くことは無論、その時代に求められる形を模索し続ける姿勢が必要なのだろう。