2024年シーズンは143試合を戦って68勝70敗5分。どの試合にも意味があったが、私は特に143試合目のヤクルト戦(10月5日)に「未来のカープの姿」を見た。1回は13年間〝カープの顔〟の一人だった野村祐輔が最後のマウンドへ。そして2回から5回までは一転してルーキー滝田一希が登板。予想を上回る大器ぶりを発揮し、ヤクルト打線を1点に抑えた。彼は登板直前にブルペンで鼻血を出し、場内アナウンスから5分後にマウンドに立った。しかし心配無用。力感あふれる変則モーションで、ヤクルト打線の空振りを誘った。まだ制球はアバウトだったが、かつての沢村賞投手・池谷公二郎を彷彿とさせた。6、7回を無失点に抑えた高太一もルーキー。彼もまた150㌔超えを連発し、ヤクルト打線を寄せ付けない。滝田と高を合わせて6回で被安打わずか3本。特にその直前の試合まで先発投手が打たれていたため、ルーキー2人がたくましく見えた。一方、野手でもプロ初出場の若ゴイが躍動した。まず高卒2 年目の内田湘大が3回に左前打。続く4回には「内田さんに1本出たので、自分も」と高卒ルーキーで4番に座った仲田侑仁が左前にクリーンヒット。若手打者も低迷していたので、こちらもたくましかった。この試合は滝田が初勝利。9回を締めた高卒8年目の高橋昂也が初セーブ。さらに4回の高卒3年目の田村俊介の右前適時打。7回の支配下登録2年目の二俣翔一の中前適時打などにより3-1でカープが快勝。まさしくカープの近未来を感じさせる勝利だった。
プロフィル
迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」