鍛冶職人の師匠に弟子入りし来年で30年、初めて広島市内で展示会を開いて20年がたちます。証券会社に勤めていた頃、素敵な鉄製のシャンデリアやオブジェのある市内のカフェが気に入り頻繁に通っていました。何気なく店主さんに鉄製品の購入先を尋ねると「わしが作った」と言われてびっくり。このとき何かを感じたんでしょうね。すぐに作り方を教えてくださいとお願い。しかし女の子には無理とすぐ断られました。あきらめの悪い私は、定期的に弟子入りを志願し、断られることを繰り返す日々。最初の依頼から5カ月後にようやく認めてもらいました。子どもの頃からぜんそく持ちで運動経験はなし。力も弱く、鉄を打つ作業は困難の連続でした。やけどやケガなど危ない思いもしました。私の作品は、植物やチョウチョをかたどるオブジェ・照明など、無機質な鉄に軽やかさや透明感を持たせます。実は、これらの作品に対する「女性らしさ」という褒め言葉に反発があり、力強さにあこがれ続けました。力があれば作品の幅は当然広がる。そこから歳月を重ねた価値でしょうか。今は、私が私らしく作品に向かうことに納得できるようになりました。カフェでの「教えてください」の一言が私の人生を一変。30年の節目に立ち、私なりのその小さな〝羽ばたき〟の価値の大きさを感じています。12月12日から福屋八丁堀本店で個展を開催。歩みを感じてもらいたい。

担当記者:梶原

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