広島大学(越智光夫学長)は今夏、電気自動車(EV)のモーターとインバーターの電磁波に関するEMC試験を行うための高電圧対応電波暗室(EVチャンバー)を同大学デジタルものづくりイノベーション拠点(東広島市鏡山、3月末完成予定)に設置する。世界的にEV開発が進む中、マツダも2030年までに電動化技術の全車種搭載を掲げており、西日本で唯一の専用試験機関として部品メーカーの需要の高まりに対応する。

一部2階建て延べ2031平方㍍の1階に363平方㍍の試験用スペースを確保。EMC試験はガソリン車でも電装品や車載器で実施されているが、EVには従来の車にはない高電圧部品があり、走行条件を再現しながら実施できる特別な設備が必要になる。新施設では実際に400〜800ボルトでモーターやインバーターを動かしながら、電磁波の負荷を掛けることで、誤作動や国際基準を超える電磁波発生の有無を調べる。自動車部品サプライヤーが同試験に使える外部施設は少なく、国内では愛知県に4、千葉県に1の計5拠点のみという。広島大学学術・社会連携室の串岡勝明特命教授は「22年8月にマツダが県内部品メーカー3社と共同出資で電気駆動ユニット開発・生産のMHHOエレクトリックドライブを設立するなど地場でもEVの開発が進んでおり、検査機関の整備は急務。県内企業はもちろん、他県からの利用も見込む」と話す。広島大学は経済産業省の「地域の中核大学等のインキュベーション・産学融合拠点の整備(大学等向け)」に採択されており、同イノベーション拠点の建設には補助金を含めた総事業費14億円が投じられている。EVチャンバーのほかにもEV用のスマート蓄電池や空調システム開発の共同実験施設、高速カメラスタジオなどを設けて産学共同研究の拠点として活用する。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事