顧客との関係構築がデジタル環境で一層重要になっています。商品やサービスの品質だけでなく、顧客と企業の関係性が企業の評価を左右する時代です。デジタルマーケティングでよく使われる言葉に「顧客エンゲージメント」があります。これは企業と顧客の間の積極的で良好な関係性を指します顧客が企業に対して愛着や信頼を感じ、積極的に関わりを持とうとする状態です。顧客満足度や顧客ロイヤルティと混同されがちですが、顧客エンゲージメントは、より深いつながりを示します。顧客満足度は一時的な感情であり、顧客ロイヤルティは特定のブランドへの愛着を表しますが、顧客エンゲージメントは企業との継続的な相互交流と信頼関係を意味します。顧客エンゲージメントが高いほど、顧客は企業に対して積極的に情報を提供したり、商品やサービスを推奨したりする傾向があります。これによって新規顧客の獲得コストの削減、収益の安定化、リピート率向上など、さまざまなメリットが期待できます。
顧客エンゲージメントを高める
顧客はウェブサイト、SNS、メール、広告などさまざまなチャネルを通じて企業と接点を持っています。そのため、全てのチャネルで一貫した顧客体験を提供することが重要です。例えば、ウェブサイトで商品を閲覧した顧客に対してSNSで関連情報を提供したり、メールでフォローアップしたりすることで、顧客とのエンゲージメントを高めることができます。特にLINEのようなアプリを活用すれば顧客との距離を縮めることが可能になります。例えばLINEの公式アカウントを開設し、顧客とのコミュニケーションの場として活用します。プロモーションを実施して友達登録を促進し、情報提供やクーポンを配布することも手法の一つです。また、購買履歴や属性情報を基にパーソナライズされたコンテンツを配信することでエンゲージメントを高めます。
顧客一人一人に合わせたサービス
顧客のニーズや嗜好は多様化しています。そのため画一的なサービスではなく、顧客一人一人に合わせたサービスを提供することが重要と良く言われています。顧客の過去の購買履歴や行動データなどを分析し、個々の顧客に最適な情報を提供することで顧客満足度を高め、エンゲージメントを強化できます。
データ分析と顧客理解
そのためには顧客データを分析し、顧客の行動パターンやニーズを深く理解することが必要です。例えば、ウェブサイトの訪問履歴や購買履歴、アンケート結果などを分析することで、顧客がどのような情報に関心を持ち、どのような商品やサービスを求めているのかを把握できます。これらの情報を基に、ターゲットに合ったマーケティング施策を実施することで顧客エンゲージメントを高めることができます。これらをまとめると、顧客エンゲージメントを高めるためには多チャネルでの顧客体験の向上、個々の顧客に合わせたサービスの提供、データ分析と顧客理解が重要です。これらの取り組みを通じて顧客との長期的な関係を構築しなければなりません。顧客エンゲージメントは一朝一夕に構築できるものではありません。継続的な努力と改善を通じて顧客との信頼関係を深め、長期的なエンゲージメントを育むことが重要です。
プロフィル
宮田 庄悟 (みやた しょうご)1956年1月3日生まれ、和歌山県出身。早稲田大学を卒業し、79年4月に電通入社。東京、ニューヨーク、北京、ロンドンでマーケティング、イベント、スポーツ業務に従事。「ラグビーワールドカップ2019組織委員会」の広報・マーケティングなどを担当。20年4月から現職。