マリモホールディングス(以下HD)は国内不動産事業を統括する「マリモ」と海外不動産事業を担う「マリモ グローバル リミテッド」に加え、非不動産事業の統括会社「マリモソーシャルソリューションズ」(以下MSS)を8月1日付で新設した。それぞれに統括会社を置くことで、よりスピーディーでフレキシブルな事業推進を図る。〝第三の創業〟と位置付ける大幅な組織改変について、HDの深川真社長に聞いた。

-第三の創業に込めた思いは。1970年に父が設計会社を設立。90年に佐賀県で自社分譲マンション1棟目の販売を始め、これまでの開発実績は全国480棟3万996戸に上ります。設計会社として創業した時から続く〝ものづくり〟の精神を強みに、オフィスビルや商業ビル、ホテルなどさまざまな案件を手掛け、不動産総合デベロッパーへと成長。また、2030年をめどにビジネスとソーシャルビジネスの割合が50対50で共存する会社「ソーシャルビジネスカンパニー」を目指しています。これらを第二創業期と捉えており、グループの売り上げは十数倍に拡大しました(24年7月期連結売上高は約711億円)。第三の創業では、例えば創業家のような絶対的なトップがいなくても人材や組織が育ち、永続していく仕組みをつくる方針です。10年以上前から構想しており、当社は社員の生きがいを創出するステージや人間性を高める道場のような存在であるべきだと、意識してきました。ある意味、その最高の舞台は社長職ではないでしょうか。新事業を積極的に任せるほか、主体性や多様性を重視しながら人を育て、現在、多くのグループ会社の社長に社員を登用。各社がぶれることなく、世の中に貢献し、社会から必要とされ続けるよう、グループの経営理念やパーパスの浸透を図っています。企業の永続には社会との共生が必要不可欠です。経営理念でもある「利他と感謝」の心を持ち、社会に役立つ〝人をつくる〟ことが究極の社会貢献であり、永続する企業に求められる使命だと考えています。-マリモは8月1日付で深川社長が会長に就き、谷本勝秀取締役専務執行役員が新社長に就任。創業家以外から初めてマリモの社長が選ばれましたが、中核企業を担う人材が育つ仕組みができたということですね。谷本はマンション事業を牽引してきた人材で、真面目にこつこつとやるべきことをやる。まさにマリモの社風に合っています。新会社MSSの社長も私が務めるのではなく、マリモHD社長室長の岡﨑健治に任せました。マンションセールスの本を執筆するほど当社で実績を残し、他社で修行してきた人材です。-事業の方向性は。少子高齢化が進んでも住宅の需要はゼロにはならないので、引き続き変化に対応していく方針です。例えば23年3月のイオンモールとの資本業務提携では、同社の商業施設の敷地や隣接地を活用して多機能複合型の大規模開発を進めるほか、地域コミュニティの形成支援に積極的に関わりながら地域共創を目指したい。住宅や不動産開発は、人々の豊かな暮らしを創造するという意味で社会性の高い事業ですが、さらにMSSの設立によって、ソーシャルビジネスを新たな事業の柱として確立させます。公共福祉、地方創生、ウェルネス、環境衛生、グローバル、ITの6領域で、社会課題の解決を目指すビジネスを強化。各領域でミッションを設定し、方向性を明確化しました。30年にはビジネスとソーシャルビジネスに関わる社員数をグループ内で50対50にしたいと考えており、MSSの社員数は現在の約300人から1500人規模へ引き上げる構想です。事業によってはベンチャー企業のような性質があり、トータルではまだ赤字ですが、3カ年計画で全領域の黒字化を目標としています。-将来の事業承継の考えは。当社は多岐にわたって事業を展開しています。幸い、子どもたちも会社を継ぎたいと言ってくれていますので、それぞれ事業を引き継いで、信頼できる社員と力を合わせ、さらにマリモグループを成長させてほしいと思っています。

プロフィル

ふかがわ まこと1973年1月29日生まれ、広島市出身。94年、広島修道大在学中にマリモ入社。翌年卒業。99年取締役、2000年取締役社長室長、07年に代表取締役社長、24年8月に代表取締役会長就任。15年のマリモホールディングス設立と同時に現職を務めている。

担当記者:吉田

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