迫 勝則カープの独り言/ No942
来シーズンの大きな楽しみの一つは、栗林良吏が先発に挑戦する物語である。なぜ楽しみかというと、彼が2020年ドラフト1位でカープに入団してからずっとリリーフ一筋だったからである。1年目から球界屈指のクローザーとして君臨した栗林は、プロ5年間の271試合に全て救援で登板し、通算4勝17敗134セーブを挙げた。中でも21年東京五輪で日本代表の抑えを務め、胴上げ投手になったことで広く知られるようになった。
かつてカープでは大野豊と佐々岡真司が100勝100セーブを達成した。そのため栗林もそれに近いことができるだろうと楽観視するファンもいるかもしれない。ところがこの転向例では、うまくいかなかったケースの方が多いのだ。中でも、比較的数多くある先発→抑えの成功例に対し、逆の成功例は極少なのである。
例えば1998年に18セーブを挙げた小林幹英は、翌99年に先発に回ったものの7試合のみで、再び救援へ。2002年に30セーブを挙げた小山田保裕は04年に先発に挑んだが、規定投球回数に達しなかった。また03年にルーキーとして25セーブを挙げた永川勝浩は、翌04年に4試合先発したが、結果を残せず抑えに戻った。
抑えというのは、分業された投手の仕事の中で最も〝専門職〟の色が強い。できれば歌舞伎役者のような個性も欲しい。一方で先発というのは〝一般職〟である。その分、人間力やスタミナが必要になる。抑え=100㍍走、先発=1万㍍走といってもよい。プロ初先発に挑む栗林がこれをどう克服するのか、興味は尽きない。
PROFILE
迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「カープ不朽のエース物語」。