食品パッケージ商社のシンギ(中区南吉島、田中友啓社長)は9月、食品のおいしさを損ないにくい特殊凍結機「プロトン」を載せるテスト車両を運用開始した。食品工場や飲食店、セントラルキッチンなどに出張。冷凍〜解凍を半日程度で試してもらい販売につなげる。人手不足や観光客増加などを背景に凍結機の需要が高まっており、2025年3月期はプロトンを含む食品関連機械全体で5億円の売り上げを目指す。また凍結機の提案を機動的に行うことで、主力のパッケージ商品の新規顧客開拓も図る。

産業用凍結機製造の菱豊フリーズシステム(奈良)と協力し、トラックの荷台を改造。1時間に15㌔の食品を凍結できるPF-15Bと、それに対応する解凍機KAITO+を載せた車両を関東と関西に各1台配備した。広島では10月28日頃から使用予定で、既に3件の予約がある。同社の冷凍技術「プロトン凍結」は、均等磁束と電磁波を加えて急速凍結する。磁力で水分子を整列させ食品・食材の細胞破壊を防ぐことで、うま味成分を含むドリップの流出や離水を減らし、鮮度や食感、風味を維持する。また、袋詰めした食品を液体窒素に漬けて凍結する他社製品とは違い、密閉・真空状態にする必要がないため料理の形状を保てる。型崩れを避けたい市内のお好み焼き店なども導入を検討しているという。シンギでは21年の販売開始時に営業拠点など全国6カ所にテストルームを設けたが、利用者が被検体を持参する必要があり、調理直後の品を冷凍したいというニーズと合わないなどの課題から利用数が漸減していた。今後はテストカーが全国を巡回し、郊外や離島にも出向く予定だ。また、人流の活発化や環境対策などで需要が伸びるパッケージ事業の商機も見据えており、凍結機導入以降の商流を含めた包括的な営業活動に取り組む。同社は駅弁や仕出し、給食会社などに素材・形状・デザインの異なる20万種類のパッケージを販売。近年は同凍結機を活用した冷凍食品事業「時空食堂」を展開。主にオンラインで全国の特産品を使った弁当やおにぎりなどを販売し、売り上げを伸ばしている。同社の24年5月期の売上高は過去最高の232億7000万円だった。

担当記者:額田

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