パーソナライゼーション
デジタルマーケティングが伝統的なマスマーケティングと違う点の一つは、パーソナライゼーションが可能なことです。
このパーソナライゼーションとは顧客の属性やニーズに合わせて、情報、商品、サービス、対応などを最適化する手法です。これは不特定多数に同じメッセージを送るマスマーケティングや、特定のグループに分けるセグメントマーケティングとは手法が異なります。
その効果としてコンバージョン率と売り上げの向上が挙げられます。また、顧客ごとに適切なタイミングで接触することで顧客満足度の向上や良好な関係の構築につながり、ひいては長期的な顧客ロイヤリティの向上に結びつきます。
この取り組みの鍵となるのは顧客データの収集と分析です。購買履歴、閲覧履歴、検索ワードなどを統合的に集め、個人単位での行動パターンを深く理解することから始めます。この分析に基づき、顧客に最適なコンテンツを最適なタイミングで届けます。具体的にはウェブサイトのバナーや商品一覧の並べ替え、メールの件名や本文のパーソナライズ、プッシュ通知のタイミング調整などを行います。
パーソナライゼーションの事例
アマゾンのレコメンドエンジンはユーザーの閲覧履歴・購買履歴・買物カート情報・検索ワードなどを分析し、「この商品を見た人はこんな商品も見ています」「あなたへのおすすめ」といった形で、最適化された商品提案を行います。この仕組みによってユーザーは自分の興味関心に近い商品に自然と誘導され、クロスセルやアップセルの成果が向上します。
不動産情報サイトのライフルホームズは、ユーザーが「お気に入り登録」や「見学予約」した物件データを活用し、広さ・間取り・駅距離などの重視ポイントを分析します。そして、再訪時にはユーザーの好みに合わせて新着物件を表示。例えば特定沿線の物件ばかり見るユーザーには、その沿線の新着情報が優先的に通知されるなど、パーソナライズされるのです。
米国高級百貨店のサックス・フィフス・アベニューは、AIを活用したハイパーパーソナライゼーションで成果を上げています。顧客の閲覧履歴や行動データをAIがリアルタイムに分析し、トップページ全体を一人一人の好みに合わせて最適化。発表によると訪問者当たりの売り上げが7%増加し、コンバージョン率も約10%向上したといわれています。この事例は単なる商品レコメンドではなく、ウェブサイト全体を高度にパーソナライズすることで、売り上げを高められることを示しています。
手軽なパーソナライゼーション
高価なツールを使わなくても、手軽に始められるパーソナライゼーションもあります。それはメール・LINE配信をパーソナライズすることです。配信システムを使って顧客の購買履歴や会員登録情報を基に性別・年代・購買頻度などでグループ分けし、顧客に合わせて内容を変えて配信するだけでも効果が期待できるでしょう。
さらに顧客の氏名や購入履歴などのデータを活用して、件名に「〇〇様、新製品のご案内」とするだけでも開封率が改善できる可能性があります。また、顧客の誕生日に合わせたお祝いメールと割引クーポンを自動で送ることも効果的です。顧客満足度を高め、再購入を促す施策となります。
大事なのは、一律に同じな対応をするのではなく顧客一人一人の属性や履歴に合わせたパーソナライゼーションを意識して施策を考えることです。その際にツールを使うことも検討すべきですが、小さな工夫でも成果につながり、積み重ねることで顧客との信頼関係を深められます。
PROFILE
宮田 庄悟(みやた しょうご) 1956年1月3日生まれ、和歌山県出身。早稲田大学を卒業し、79年4月に電通入社。東京、ニューヨーク、北京、ロンドンでマーケティング、イベント、スポーツ業務に従事。「ラグビーワールドカップ2019組織委員会」の広報・マーケティングなどを担当。20年4月から現職。