6月27日の株主総会と取締役会で専務から昇格した。小出克己前社長からバトンを継ぎ、新たな成長戦略を打ち出す。その原動力となる〝空環創造マルチブランドカンパニー〟を掲げた。新たなマーケット開拓を中心に経営戦略を聞いた。
-マルチブランド戦略を掲げた狙いを教えてください。自社工場で海外有数のブランドを複数、ライセンス生産する独自のビジネスモデルは同業他社にない強みだ。米ブランドベッド「サータ」は国内独占販売権を持ち、日本に合った規格で製造販売し50年以上になる。仏ブランドソファ「リーン・ロゼ」は40年以上、独ブランドの布張りベッド「ルフ」は通算30年の実績がある。新たにベッドとインテリアのブランド導入に向け、現在、海外の提携先と交渉中だ。「ドリームベッド」やウオーターベッド「ウォーターワールド」の自社ブランドも含め、選んでもらえるラインナップを充実させ、訴求力を高める狙いだ。引き続き、ラグジュアリーホテルとのコラボ企画マットレスや、1月に発売したフルオーダーマットレスを拡販するとともに、自社ブランドの海外展開も計画している。やすらぎ、くつろげ、集い、憩い、楽しむ〝空環〟創造を支援する、わが社の使命はこれからも変わらない。世界のブランドを、日本の技術で日本人に合った製品を届ける。マルチブランド戦略を強化拡大していく。-八千代第一工場(安芸高田市)の縫製完成棟が1月稼働しました。寝心地の決め手となるマットレスのコイル製造と、全体を縫製し仕上げる工程を集約。これで生産力は従来の1・3倍に高まる。主力のリゾートホテルやシティホテルはコロナ禍から回復しており、ホテル向け需要増への対応が可能になった。コイル配列は自動化したが、縫製は人の手なくしてはできない。職人技を磨き継承していく。従来から受注生産体制で1週間以内に納品できる。-前職で培ったアンテナが働くようですね。大学を卒業し、55歳まで三井不動産に在職。広島ではアルパーク北棟やトランヴェールビルなどの開発プロジェクトに携わった。住宅事業やマンション販売などさまざまな仕事を経験するうち、顧客の声を聞く大切さを学んだ。物事の見方が違ってくる。この企画や商品でいいのか、厳しく検証するようになった。当社に入り、メーカーとして製品に対する誇りとプライドがあると強く感じた。一方で、「つくりたい」、いいものだから「売りたい」という情熱があっても、求められるもの、欲しいと思われるものを提供するマーケットインのものづくりが必要ではないかと考えた。入社時に、方向性として成果を生むショールーム機能と首都圏攻略などが念頭に浮かんだ。営業エリアは全国をほぼ網羅するが売り上げの60%は首都圏。昨年12月、中央区日本橋に東京支社を開設し、新横浜の家具販売店、商業施設、ハウスメーカーの各販売経路別営業拠点と渋谷にあったショールームを集約した。効果的に空環創造を発信し、営業強化を図る体制が整った。また、広島、東京、大阪に次ぐ2022年8月開設の名古屋ショールームはショールーム集積エリアに位置。ショールームは年1店ペースで政令市に計画。不動産業界で得た経験を社内で計り、生かしていければと思っている。-新たな発想を実現する社内機運が根付き始めました。フルオーダーの発想は社内にあったが、なかなか踏み出せていなかった。執行役員時代に、みんなのやってみたいとの思いを実現させたいと考えた。まずは社員の体形など数千のデータを基に独自のアルゴリズムから寝心地を導き出した。それを基にフィッティングマットレスを東京、名古屋のショールームに設置。引き続き、計測データが蓄積され、ハイエンドなマットを求める顧客層に支持されている。26年3月期で売上高110億円を目指す中計へ向けマルチブランド戦略、リアル店やECとのシナジー創出も図り販売チャネルの強化拡大を推し進める。21年に東証二部(現スタンダード)上場。創業は広島の復興に寄与したいという精神が働いたと伝え聞く。義理の父となる創業家の故渡辺博之社長のパブリックカンパニーを目指す意志を引き継ぎ実現させたい。
プロフィル

みやけ ひろと1965年12月1日生まれ、岡山市出身。早大政経卒。1989年三井不動産入社。2021年ドリームベッド入社、22年取締役、23年専務。
担当記者:藤井