企業の歴史学ぶ
被爆翌年の6月まで広島県庁、広島地方裁判所、NHK、中国新聞社といった主要機関は東洋工業(現マツダ)本社に間借りし、運営を続けていた。
広島西南平和ロータリー衛星クラブは、被爆と企業の歴史を高校生に学んでもらうプロジェクト「RE:DAYS(リデイズ)」の一環で6月25日、マツダを訪問。修道高校の1年生7人が社員へインタビューした。
東洋工業は建物疎開で市街地にいた社員など119人を失い、335人の負傷者を出した。府中町の本社工場は屋根が飛ぶなどの被害を受けたが、市街地から大州通りを通って東に避難する被災者が最初に寄れる救護所として解放し、その日から活動を始めた。
戦後はGHQのプレスコードで被害状況が県外に十分に伝わらず国の支援を十分に受けられない中、地元有力企業10社でつくる財界グループ二葉会の一員として復興の先陣を切った。旧市民球場、広島市公会堂(現広島国際会議場)といった市民が集う都市施設を整備。また、戦中に回収された鍋など金属類の生活用品を手掛ける企業もあったが、東洋工業は復興物資を運べる三輪トラックを1945年12月までに10台生産。雇用創出だけでなく、広島で物が造れると県内外へアピールした。マツダコーポレート業務本部の植月真一郎さんは、
「他社が海外生産に移った高度経済成長期でも本社の生産を維持。今でこそグローバル企業だが、戦後の広島を支える地場産業を担っているという自負がある。むろん広島も被爆前、1000年以上の歴史があり、知れば知るほど面白い。高校生の皆さんには地元を好きになってもらい、県外に出たとしても、その良さを全国に広める役割を担ってほしい」
豆苗肉巻き隊
発芽野菜生産で国内トップの村上農園(佐伯区)は6月、ベルギーの団体が主催する国際的な表彰「フューチャーアワーズ プロダクト・オブ・ザ・イヤー」と「広島広告企画制作賞金賞」に初めて輝いた。
フューチャーアワ―ズは、高成分野菜ブロッコリースーパースプラウトを植物工場でサステナブル(持続可能)に生産する点が評価された。広島広告賞は豆苗(とうみょう)の肉巻きレシピを紹介するCMが受賞。これを絶好のタイミングに近々、マスコットキャラ「とうみょん」などの3人組ユニット「豆苗肉巻き隊」を結成し、オリジナルダンスの配信を始める。CMと同様に童謡「いとまきのうた」のメロディーに乗せ、親近感を抱いてもらう。村上清貴社長は、
「食材の調理動画を配信するPR作戦が当たり、2020年のユーチューバー部開設から登録者数3万2500人、視聴累計1100万回と勢い付く。献立の幅を広げる提案が需要を掘り起こし、過去最高の年商113億円という躍進につながった。SNSでオリジナルダンスを拡散してくれた人に、豆苗肉巻き絵柄の腹巻きを贈る企画を準備中。食卓も巻き込んでいく」
ポーランドと広島
上下水道の設計ソフトを開発するパイプデザイン(西区草津新町)は5月20日、大阪万博でポーランドが主催した経済フォーラムの中で、同国のフルード・デスク社と製品の相互販売に関する契約を結んだ。
きっかけは2023年、フルード社から届いた連携依頼のメールだった。同社は空調や換気などの建築設備向け設計ソフトを開発しており、業種が異なるため断りを入れたものの、その後も熱烈なオファーを受け、オンラインで商談を重ねていた。邑楽博社長は、
「打ち合わせをしていたちょうどその頃、首都ワルシャワの戦時中の写真展が、中区袋町の旧日本銀行広島支店跡で開かれると、はるか遠くの国に住むフルード社の社長から教えられた。ワルシャワは第二次世界大戦で街が破壊し尽くされ、瓦礫の状態から復興。広島とシンパシーを感じると熱く語ってくれた。私も心が動いた」
大阪万博では、両国のビジネス界の連携を深める象徴的な事例として調印式を公開。今後、製品の相互販売と技術的な連携を深めていく。
印刷業界を面白く
がむしゃらに働きまくった。3代目社長の新たな挑戦が印刷会社の経営を変貌させた。
1951年設立のデルタプリント(南区大州)の池田豊隆社長(43)は2013年に3代目に就く。米国の大学を卒業後、東京のIT企業でシステムエンジニアとして働いていたが、家業の不振を知り30歳で帰郷。家業を継ぐ決心を固める。早朝4時からのポスティングや月に1000人との名刺交換など、抜群の行動力で業績を回復させた。近年は自社や業界のイメージ向上のため、SNSの活用に力を入れる。
「今年2月、沖縄方言の海人(うみんちゅ)をモチーフにし、印刷人(ぷりんちゅ)の文字を入れたTシャツを作成。投稿したところ表示回数が330万回を超えるなど反響があった。SNSで知り合った書家に筆を入れてもらったのが良かったのでしょう。斜陽といわれる印刷業界が〝面白い〟と感じてもらえることをどしどし発信していきたい」
6月にはSNSで集めた仲間と共に新会社「ワンポ」を設立。各メンバーの専門知識を生かし事業者の課題を解決すると意気込む。
社長は本気
ひとつ本気でやってみるか。念頭にもなかったことができるようになり、新しい境地を開いた達成感が素晴らしい。本気かどうか、社長の決意が職場の空気を変えた。
県は7月4日、市内ホールで「人的資本経営推進セミナー」を開いた。会場とオンライン合わせ約290人が参加。有識者による基礎解説に続いて、ホテル備品販売を手掛けるシンワ(佐伯区)の太原真弘社長が登壇。2年前、社長独断で県リスキリング宣言企業に登録した。当時、社内全システムの入れ替えを計画し、まずはDX推進に役立つITパスポート有資格者を社内に5人以上確保する目標を掲げた。
「朝礼でITパスポートの話をすると、みんなポカンとした顔だった。システムの入れ替えは生産性向上や業務効率化につながり、週休3日制などの基盤固めにつながる。そのためにどのようなスキルや知識が必要なのかを語った。まずは私の本気度を見せたいと、ITパスポート取得へ猛勉強を始めた。その本気度が伝わったのか、次第に試験勉強に励む社員が現れ、昨年9月には目標を達成することができた。私は4度目の試験でようやく合格。経営者の本気度がいかに社員の意欲を高めるか、一番大切だと思っている」
うれしそうに胸を張った。県は昨年度から「リスキリング伴走コンサルティング事業」を開始。リスキリング宣言企業は6月27日で460社に上る。