復興の軌跡と未来
被爆80年。壊滅的被害を受けた広島の街や人、企業は未曾有の苦難を乗り越えてきた歴史がある。広島商工会議所は、驚異的なその軌跡と未来への決意を伝えていく取り組みを始めた。
商議所報4月号の特集企画「プライド・オブ・ヒロシマ(広島の企業の復興の歴史)」に続き、6月号から企業インタビューを連載する。2023年5月のG7広島サミットに合わせ、ひろしまゲートパーク(中区基町)に期間限定で開いた「プライド・オブ・ヒロシマ展」を翌年4月から常設展示。地元企業の貴重な資料を編集した映像演出と音楽で紹介している。同展実行委員長を務める池田晃治会頭は、
「広島は歴史や伝統、食文化や特産品、復興を支え世界で活躍する多くの企業がある。ポテンシャルがあり、広島に生まれ育ったことを誇ってもらいたい。失敗を恐れずチャレンジする人を支える素地がある。若い人たちには新たなイノベーションの地として広島を選んでほしい」
商議所も復興の歴史に立ち会ってきた。被爆3日後に路面電車を運行し、4カ月後には三輪トラック生産を再開。そうした企業への取材を通じて不屈の精神と奮闘の軌跡を伝える。6月号からアンデルセングループ、イズミ、オタフクソース、大和重工、中国新聞社など16社にスポットを当て〝広島イズム〟をひもとく。
芸備線を有効活用
JR備後庄原駅〜備中神代駅(岡山県新見市)の赤字を受け、芸備線の一部区間が存廃の分岐点に差し掛かっている。住民の移動手段の確保はむろん、観光振興のためにも新たな仕組みや発想の転換が求められる。
事業計画や創業支援の(社)地域研修センター(中区)は6月4日、大学教授や士業経営者ら10人で活性化策を議論する。例えば地域高齢者のソーシャルビジネス創業を促し、駅舎を店舗や交流拠点に使うことで利用者が列車で訪れる青写真を描く。年内に庄原で起業講座を開き、モデル事例化を図る。JRや行政でつくる芸備線再構築協議会に提案したい考え。センターの児玉忠則理事長(82)は、
「UIターンを含め若者が地元に定着するためには、仕事がなければどうしようもない。中山間地の高齢化が問題視されるが、知識と経験豊富な人材は貴重だ。定年退職後も次々に起業し、雇用を生んでもらいたい。私も広島銀行理事を退任後、中小企業診断士の資格を取得して創業した。何歳でも遅くない」
同協議会では駅から目的地への公共交通整備、列車そのものの観光コンテンツ化、サブカルとのコラボ、駅舎への起業促進施設の誘致などの案を検討中。
インフラが危ない
人の命と暮らしを守る身近な公共インフラが危ないという。老朽化が進み、危険と判断された橋が通行止めになるケースも増えており、どうすれば長く安全に使うことができるのか。
コンクリート構造物の健全化と長寿命化に情熱を注ぐSGエンジニアリング(西区草津東)は、6月7日に西区の太田川大橋歩道橋である第8回クリーンプロジェクト(NPO法人社会基盤ライフサイクルマネジメント研究会主催)への参加を呼び掛けている。
当日はインフラメンテを学んだ後、歩道橋を清掃。老朽化リスクへの関心を高め、考えてもらうのが狙い。加川順一社長は、
「全国の道路に設置された橋梁約73万橋のうち、竣工後50年を超える橋が、2026年には約半数に達すると言われている。災害や事故が起こってからでは遅いのです。点検・補修の重要性は決して他人事ではなく、自分事として関心を持ってほしい」
同社はIPH工法(内圧充填接合補強)を、(社)IPH工法協会を通じて全国で施工展開する。高流動性の樹脂を躯体内部空気と置換して注入し鉄筋とコンクリートを接合する特許工法で橋梁、トンネル、上下水道、ダム・砂防など会員企業の施工実績は900件を上回る。
働き続ける
働く人のうち、親の介護で退職、転職を経験した人は8%で、休職した人は9・7%に上るという。何とか仕事を続ける手立てはないのか。タケウチ建設(三原市)は、4月に開設した札幌の北海道営業所に施工管理1人と本社経理1人を派遣した。二人は夫婦で、家庭の事情から北海道へのUターンを希望していたため、新拠点での雇用を継続した。
誰もが働きやすい職場づくりに力を注いでおり、23年に開いた福岡の九州営業所へも夫婦そろって派遣。昨年は社員の約6割を占めるベトナム人材が現地子会社へ異動しやすいよう退職金を給与に上乗せする新制度を導入。来年、結婚で大阪へ転居する社員の雇用を継続できるようレンタルオフイスの準備を進めている。竹内謹治社長は、
「選考基準に合えば夫婦での採用も推奨しており、既に10組に上る。互いの業務を把握できていれば当人らはむろん、会社も配慮しやすく、子育てでもメリットが大きい。県外や海外から人を呼び寄せるだけでは無責任になる。さまざまなライフスタイルに対応できる柔軟な組織づくりを心掛けている。今後、東南アジア諸国の所得や雇用水準が日本に追いついた際に、選ばれる会社でなければならない。日本に魅力を感じている人は日本で働き、住環境などで日本に合わない人は母国で業務をこなせるようにしたい」
空き家を民泊に
ホテル運営や不動産業などのグローバルリゾートグループ(廿日市市)は、大竹市玖波の5LDK一軒家を民泊施設「GRレジデンスクバイン」に再生し2年前から運営を開始。世界最大級の旅行予約サイト「ブッキングドットコム」の口コミや評価の総合判断で選ばれるトラベラーレビューアワード2025に選ばれた。
最大10人に対応する一棟貸しで1泊2万円台からという手ごろな価格に加え、宮島や岩国方面へのアクセスの良さなどが受け、外国人利用が4割を占める。近年は地域の飲食店やコンビニ食を利用した旅のスタイルが増え、素泊まりの利用が人気という。中道崇志社長は、
「相続で引き継いだ実家を民泊施設に再生しようとしても、掃除はむろんリフォーム、リネン類の取り替えなど大変なことが多い。当社は民泊管理の一環で予約管理、清掃までワンストップで対応。最近は民泊業務委託の引き合いが増えてきた。不動産有効活用の力になりたい」