今季のセ・リーグのペナントレースは、終盤にきて巨人、カープ、阪神、DeNAの争いになってきた。昨季は7月に入ってからカープが10連勝するなどして首位に躍り出たものの、その後方から一定間隔で付かず離れずに食い下がるチームがあった。それが15年ぶりに指揮を執った岡田彰布監督率いる阪神だった。忘れもしない2023年7月28日からの阪神との3連戦。首位のカープが甲子園に乗り込み、野村祐輔、森下暢仁、大瀬良大地を立てて引き離しにかかったものの、阪神の圧倒的な強さで逆襲(1分け2敗)を食らい、首位から陥落した。その後、阪神は連日ドラマチックな勝利を重ね、あの流行語〝アレ〟に向かって突き進んだのだ。昨季は逃げる阪神、追うカープ、DeNAという図式だった。しかし、今季は日替わりのような上位4チームの勢いの差が読めない。もちろんまだどのチームにもチャンスがある。カープは先発4本柱の間隔を詰め、抑えの栗林良吏の3連投も辞さない構えだ。一口で表現するならば〝プロ化した高校野球〟みたいな戦い方になるだろう。ただ若い選手が多いカープは、経験不足が足を引っ張る可能性もある。この点で3、4日にDeNAに連敗した後、新井貴浩監督が選手たちにかけた言葉が的を射ている。「〝絶対に負けられん〟じゃないけぇね」。負けて元々。選手たちには緊張感を楽しみながら、伸び伸びとやってほしい。これからのペナントレースは、劇画のようなドラマ展開になると思う。しばらく眠れない熱い夜が続く。

プロフィル

迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」

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