迫 勝則のカープの独り言 / No.922
5月20日に1軍に昇格し、6月6日の西武戦後に「肋骨疲労骨折」で離脱した2024年ドラフト1位の佐々木泰。これまで13試合に出場し39打数8安打、打率2割5厘だが、彼の打撃のスケールは他の打者と比較にならないほど大きい。始動からフォロースルーまでバットのスイング軌道をこれほどまで大きく描ける選手は、今のカープの中でいないのではないか。これを若手特有の〝粗さ〟と見るのは少し早計であろう。
バットのグリップを持つ両手が体から遠い位置にあり、ミートポイントまで十分な距離が取れているので、ボールに力が伝わりやすい。またインパクトの瞬間に左半身でしっかりと壁をつくり、これでヘッドスピードの速さを保つ。そして球は前(投手側)でさばく。つまり〝球との衝突〟ではなく、〝球を運ぶ〟イメージで打てるのだ。しかも引っ張り一辺倒ではなく、広角に打ち分けることもできる。
5月22日ヤクルト戦(マツダスタジアム)の右翼線を破る二塁打がプロ初安打。そして私が驚いたのが5月28日巨人戦(金沢)だった。1―4で巨人リードの9回。守護神マルティネスの前にカープ打線は手も足も出なかった。2死、新井監督がその日スタメンを外した佐々木を代打に送った。彼に経験を積ませるのが目的だったと思う。150㌔台後半の速球で追い込まれた佐々木は、マルティネスの決め球チェンジアップをはじき返し、右中間を深々と破る三塁打。近年のカープで一人のルーキーの存在をこれほどたくましく感じたことはなかった。彼の復帰をファンは首を長くして待っている。
PROFILE
迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」