迫 勝則のカープの独り言 / No.918
2017年夏の甲子園。大会記録を更新する6本塁打を放った中村奨成がドラフト1位でカープに入団した時、果たして誰が今日の姿を予想したであろうか。坂倉将吾との正捕手争いはかなわず、今は外野手のレギュラーを目指している。
これまでの7年間で彼が輝いたのは、多くの選手がコロナ感染し急遽、先発マスクをかぶった21年。そして背番号を「22」から「96」に変えて外野手登録で臨んだ24年だけだったように思う。24年には自己最多69打席を得たが、打率は1割4分5厘。あとの期間は2軍と1軍を往復する選手だった。
きっかけは2軍スタートとなった今季。「何かを変えないといけない」という福地寿樹2軍打撃・走塁コーチの言葉だった。また徹底して「インサイドアウト」のスイングを教え込んだ新井良太2軍打撃コーチの指導もあった。彼は自身の気付きで打撃の構えを変えた。これまで彼は両足を平行にして両肘を高くし、バットを立てて構えていた。しかし今、左足は極端なオープンスタンス。そしてバットを担ぐように寝かせて構える。これは自身が守備練習をする時にノッカー(ノックを打つ人)の打ち方を見て気付いたという。ノッカーは自分で一番打ちやすいところにトスを上げ、バットを最短で出す。今の中村のフォームはこれである。
彼の入団時、私と一緒にテレビコメンテーターで出演していた野球評論家の安倍昌彦氏がこう言った。「彼はルーキーでも〝一番センター〟で使えますよ」。あれから8年。時間はかかったが、今季の中村は一定のポジションをつかみかけている。
PROFILE
迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」