太陽光発電・蓄電システム開発のQD Power(中区本通、寺田典広社長)、(社)未踏サイエンスに基づく環境調和型産業振興会(東京、玉浦裕代表理事=東京工業大学名誉教授)などは7月、「次世代最先端蓄電池研究会」(事務局=同社)を発足した。30日に東京工業大学の木倉宏成准教授らと第1回研究会を共催。次世代技術と目される「全固体電池」を用いた蓄電池システムを通じて、地球温暖化対策への貢献や各種企業・団体とのオープンイノベーションを目指す。
一般的なリチウムイオン電池の液体状電解質は温度変化に弱く、発火や液漏れの可能性がある。全固体電池は文字通り電解質を全て固体にすることでデメリットを解消し、エネルギー出力は数倍に高まる。QD Powerは全固体電池を使う「系統用大容量高性能蓄電池システム」の組み立て工場を廿日市市大野で7月から操業。研究会メンバーとの共同研究開発によって多様な利活用策を探る。例えば天候・季節の影響を受けやすい太陽光や風力で多く発電できた際に蓄えておき、不足時に供給する電力網を構築するほか、大規模EV充電ステーションなどで活用を想定。モビリティーや航空宇宙、データセンター、防災などの分野にも広げていく。研究会の第1回は100人以上が参加。講演を行い、全固体電池を開発したアンパワー(東京)と蓄電池事業のソリッドバッテリー(同)の2社で代表取締役を務める朝日正雄氏、早稲田大学名誉教授で環境エネルギー技術研究所(同)代表取締役の横山隆一氏、名古屋工業大学教授の中山将伸氏らが登壇した。
全固体電池でユニコーン目指す
QD Powerの工場ではアンパワー製のポリマー系(集合物系)全固体電池セル(構成単位)を複数組み合わせ、系統用蓄電池システムに仕上げる。電子制御機器メーカーのサンエス(福山市)がサポート。セルは中国の協力工場で生産する。同蓄電池システムは東京工業大学の技術指導を受けてソリッドバッテリーとQD Powerが共同開発した。高エネルギー密度で大容量、高速充放電性能などが特徴という。全固体電池は実現の難易度が高いとされるが、燃焼・ニッケル片の押し込み・塩水浸透・衝突・強圧力などの試験をクリア。大和製罐の試験結果によると放電深度100%の充放電を繰り返すことができ、年間自然放電率は4%以下、満充電容量減少率は20年間で20%以内と低い。引火性液体を含まずに発熱がほとんど無く安全性が高い上、マイナス40℃の環境下でも充放電できるため寒冷地の実用化も可能。現在、最もシェアの高い製品と比較して1㍋㍗時当たりの年間CO2 排出量を30%以上削減できると試算する。QD Powerは、イノベーション立県を掲げて企業誘致を進める広島県から、広島ガス所有の建物を紹介されて進出した。ユニコーン(時価総額10億㌦以上のスタートアップ)を志す企業を対象とした、県の伴走支援プログラム「2024年度ひろしまユニコーン10 スタートアップアクセラレーション」に採択された。
担当記者:吉田