広島大学(越智光夫学長)と日本アイ・ビー・エム(以下、IBM)は1月、次世代スマート酪農の実現に向けた共同研究をスタートした。同大学の生物生産学部付属の農場で、家畜の搾乳量や行動履歴、飼料を食べた量などを調査し、牛やヤギの健康状態を向上させる環境や最適行動を分析。酪農経営を最適化するための助言に特化したAIの構築を目指す。
農林水産省の畜産統計によると、国内の酪農家数は2003年の2万9800戸から23年は1万2600戸まで半減。従事者の高齢化と後継者不足に加え、直近は飼料価格の高騰による経営環境の悪化が追い打ちを掛けている。共同研究には、広島大学の杉野農場長と島田生物生産学部長を中心とした教員、専門職員、学生ら、IBMからはコンサルタントとデザイナー、データサイエンティストの約10人が参加する。2週間に1度のペースでミーティングを重ねながら実証実験を行い、生産性を高める仕組みの構築を目指す。全国や世界に広めることで、食糧供給の安定化に役立てたいとする。同農場では搾乳牛30、繁殖牛20、綿羊10、トカラヤギ20、シバヤギ10頭程度を常時飼養。自動搾乳ロボットや自動給餌器、牛舎環境維持機械、個体行動管理システムなどを22年度までに導入済みで、作業の機械化とデータ収集基盤を整えてきた。次のステップとして、集めたデータを一元管理できるプラットフォームの整備、より高度な仮説検証が可能になるデジタルツイン農場(仮想空間内に現実空間を再現)の実現に取り組みたいとする。