CO2減らす車
日々刻々と世界を驚かすトランプ。就任演説でいきなり「掘って掘って掘りまくれ」とぶった。化石燃料の石油、天然ガス増産の方針を示し、気候変動対策に対する不信感をあらわにした。
日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルを目指すと宣言。世界はどこへ向かっていくのか、車産業にとって一大事だ。
マツダは、車を走らせるほどCO2が減るという画期的な技術開発に挑戦している。CO2を吸着する鉱物「ゼオライト」を詰め込んだ装置を車体に装着。それに排ガスを通し、CO2を分離させてタンクに集める。エンジンの動力源は、微細藻類がCO2を吸収したと見なされるバイオ燃料を採用する。燃焼時の排出量が実質的に差し引きゼロとなり同装置で回収した分だけCO2を減らせるという理屈だ。
同社が参戦中のスーパー耐久シリーズのレースで、本年度の開催日にラジコン車に取り付けて操縦体験イベントを行ったほか、6月のタミヤグランプリ全日本選手権広島大会でも展示。ファクトリーモータースポーツ推進部の上杉康範マネージャーは、
「年内をめどに、スーパー耐久専用のバイオ燃料車両に同装置を搭載したい。実用化には5年や10年を要するかもしれないが、〝カーボンネガティブ〟の夢を追い続ける」
EVの電気は液体燃料と比べ、エネルギー密度が大きく劣ると言われる。マツダが新たな選択肢を示した。
何も成功していない
輝かしい実績の裏には数え切れない失敗があった。「補助金に頼らないまちづくり」を掲げ、出身地の神石高原町を舞台に多彩な事業創出に取り組むマサーントの丹下大(まさる)社長と兄の工(たくみ)取締役の講演会が9月5日、広島市内であった。
広島青年会議所が創立75周年記念で開いた。大社長は2005年に立ち上げたソフトウエア品質保証のシフト(東京)を10年足らずで上場。直近の連結売上高は1106億円に上る。業容を拡大する傍ら、22年に実業家の兄とまちづくり事業を始めた。これまでにガソリンスタンド、ゴミ収集、自社生産の神石牛を提供する焼き肉店のほか、9月には同町初の産婦人科を開院するなど10件の事業をスタート。
一方で大型商業施設、倉庫を改装したホテル、地域産品を扱う原宿のポップアップストアなど、やむなく断念したプロジェクトも多い。これまでに投じた22億円のうち2億円は水の泡。だが、その志が折れることはなかった。試行と失敗を繰り返し、数々の事業を軌道に乗せていった。大社長は、
「町の人口は年200人ずつ減り、38年後にはゼロになる計算。夢物語と言われるかもしれないが企業や人が集まる、税収60億円の町にしたい。まだ何も成功していないが、死ぬまでやり切る」
地域通貨を活用した移住促進策、山暮らしを支援する住宅デベロッパーなど、アイデアは尽きない。
せとこまち八朔
1951年10月に初代の大谷照三さんが創業来、にしき堂(東区)は和菓子作りの心「百試千改」を大切にしてきた。
7月リニューアル発売した、はっさく味の和菓子「せとこまち」が8月までの2カ月でバラ売り8万個、箱売り(6個入り)1万箱以上を販売。前年同月比で4倍という滑り出しを見せた。広島大学との共同研究で2010年に商品化。尾道産のはっさく果肉と皮を丸ごと使ったジャムを求肥(ぎゅうひ)で包み、煎餅で挟んだ三層構造を特徴とした。
しかし近年は徐々に売り上げが減り、大谷博国社長の子息、悠介専務が2年前に商品リニューアルを決断。売り上げは既存のレモン味がはっさく味を上回っていたが競合が厳しく、はっさく1本に絞って勝負に出た。
まずは味の刷新。試作を重ね、煎餅にはシトラスの香りを取り入れ、はっさくピューレを求肥に練り込むことで一体感のある味わいになり、シロップなどを増やした。パッケージデザインも刷新し、ブルーを基調としたシンプルな装飾に。化粧箱は発売まで半年を切ったところで原案がひっくり返り、ようやく風呂敷のような形に落ち着いた。
前年比200%の売り上げ目標を掲げ、店頭で試食も促した。まさに全社一丸。企画係の井上宮仁係長は、
「社是は誠。そして百試千改の言葉を心に刻み、常に前向きに取り組んでいきます」
船中八策は龍馬。さて、せとこまち八朔が次の時代を開くか。
bホテルブランド
8月の訪日外国人客数が初めて大台の300万人を突破し、国内客も活発化。観光業の追い風を受け、ホテル運営のブレックファースト(中区本川町)は9月1日、宮島の表参道商店街に新ホテルを開業。来年1月には京都へ進出する。
旅館業法に基づく簡易宿所の開業・運営を手掛け、マンションの1室から貸し出す。中区を中心に8月時点で330室を展開。来年度は400室を超える計画だ。多くは不動産オーナーから依頼を受け運営・集客を代行。中区にある約500室のうち、6割超を同社が運営。平均45平方㍍の広い部屋と質の高い空間づくり、宿泊サイトを駆使した集客力を備える。広島八谷建設をはじめ、地場の賃貸仲介会社、大手からも連携依頼が舞い込む。高山巨志代表は、
「コロナ禍で売り上げの9割が消えた時期もあるが、社員を減らさず、誠実に事業に取り組んできた。今は業界を改革し、発展させたいと力を注いでいる。簡易宿所は一般的に格下と思われているが、当社は〝bホテル〟ブランドを掲げ、高品質な空間づくりを標準化した。リピート客も増えてきた。ホテルに代わる新たな選択肢を定着させたい」
年商規模は6億円。10億円突破へピッチを速める。
初の人事カイギ
なぜ、早々と転職するのか。どうすれば優れた人材を確保できるのか。近年は「人的資本経営」の考えが広まり戦略人事の実践が急務。経営者はむろん、人事担当者の力量、取り組みが成果を大きく左右するという。
教育研修事業で今年1月創業のキャンビーキャリア(中区)は9月19日、県内企業の人事担当者を集めた交流会「ひろしま人事カイギ」を初開催した。13社15人が参加。人材育成、研修の効果測定、離職防止の3テーマに絞り、どんな課題を抱えているのか、率直に意見交換。次回以降の開催に手応えを得たよう。進行役のコンサルティング業グロウアップ(同)の西前好朗社長は、
「同じ立場の人が集まり、好事例を共有するなど有意義なイベントだった。機密情報を扱うためか、社内で孤独感や悩みを抱える人事担当者も少なくない。企業の枠を超えて話し合う機会を有効に生かし、勇気と自信につなげてもらいたい」
人事は経営の要諦という。会社の将来を開く役割も担う。