マツダ(毛籠勝弘社長)は、山口県の防府工場で「根の生えない設備」と名付ける新たな取り組みを確立し、本社や海外の各工場へ水平展開を図る。BEV(バッテリー式電気自動車)など従来の内燃機関と全く異なる専用車の生産を控え、複数車種を同一ラインに流す「混流生産」の柔軟性を一層高める。米国トランプ政権の関税政策に限らず社会情勢の大きな変化が起きた際には、影響の少ない工場で別工場の車種を生産する「スイング生産」が有効な一手となる。最終目標は、世界中どの工場でもあらゆる車種を生産できる体制とサプライチェーンの全体最適化だ。
防府工場で先行する「根の生えない設備」は、従来の固定されたベルトコンベアラインを廃止し、無人搬送車(AGV)に置き換えることで工程の自由度を大きく高める。新型車の生産などで工程変更が発生しても固定ラインが邪魔しないため、レイアウトなどに融通が利き、コストを抑えながら短期間の準備で量産を始められる。重い車体を流すメインラインは固定しつつ、サブラインには根の生えない設備をフル活用。コンベアと違い、作業員の動線を分断しないため効率が上がる。
AGVは各作業工程に連動し、メインラインを流れる車体に追従して作業位置を正確に合わせる。エンジンを載せて車体に自動で搭載するほか、作業が必要な工程では負担軽減やミス防止も実施。例えばメインラインを移動する車体が作業者の前にやってきたら、あらかじめ必要な部品がまとめられたキット容器も一緒に届く。部品探しの時間がなくなり、取り違えを防げる。また車体を台車に載せて搬送するトラバーサーと呼ばれる設備も、レールの伸縮や台車の追加、同設備自体の移設などができるようにした。
現在生産中のプラグインハイブリッドに加え、2028年ごろに市場投入予定のBEV専用車でも根の生えない設備の仕組みを取り入れる。弘中武都常務は「世界の巨大メーカーと違い、スモールプレーヤーである当社にとって混流生産は知恵と挑戦の結晶。BEV専用工場を新設する場合と比べ、初期設備投資を85%、量産準備期間を80%削減できるなどメリットは大きい。これまでも工場内または拠点間で供給不足な車種をスイング生産してきた。BEV専用車は防府工場で生産する予定だが、情勢や需要に応じて他の工場でも展開できる。これが一番の強みだ」と自信をにじます。